かえでかわうち根をはやせ(カエデの根)
なにやら千と千尋の神隠しが始まりそうな、善良な子どもたちをさらってしまいそうなカンジではありませんか。神様ホトケさま、よろしくお願いします。これ、そんな凶悪なものではありません。
なにやら千と千尋の神隠しが始まりそうな、善良な子どもたちをさらってしまいそうなカンジではありませんか。神様ホトケさま、よろしくお願いします。これ、そんな凶悪なものではありません。
あっという間に、夏はすぎさっていきました。今、川内村には子どもたちはわずかしかいませんが、灼熱の太陽の下、カブトムシやクワガタをおいかけていた子どもたちも、涼しくなってちょっと大人びた顔つきになってきたように思います。
さてクワガタです。このクワガタは、コクワガタのオスです。クワガタとは、ツノのカタチが農家が使う農機具である鍬(くわ)によく似ているからつけられた名前です。そういえば鍬は金に秋と書くんですね。なのに鍬形虫は秋になると姿を見せなくなります。
しかしそれにしても、誰でしょう、こんなことをするのは! 森のナラの木にいっぱい傷をつけてあります。こうするとナラは樹液(ヤニ)をいっぱい出しますから、クワガタムシがおびきよせやすくなります。こんなことをしてクワガタムシを集めようというのは、どうもこういうことをご商売にしている人たちではないかと思うのですが、真相はわかりません。
ただクワガタムシをとりたかったら、ナラの木をこんなふうにいじめなくても、ちゃんととる方法はあります。
そのひとつは、バナナをネットに入れて木にしばっておくだけです。クワガタムシは、ネットにいっぱいついて待っててくれます。
もう一つの方法は……、また来年にでもお教えしましょう。
と思ったけど、特別に教えます。もう夏もすぎたし。白い布を森の中に持っていって、木と木の間に吊るします。暗い夜がよろしいのですが、特に9時以降ならベストです。この白い布にライトをあてます。そうすると、チョウやクワガタ、カナブンにカブトムシと、いろんな昆虫が白い布に群がってくれます。来年まで覚えていたら、お試しあれ。
ツツジといえば、春に咲く花です。川内村の村花はドウダンツツジというかわいいツツジですが、高塚山山頂一帯の自生地が満開となるのは6月中旬のことです。ところがこのツツジは、夏に咲きます。しかも花の形がおもしろいです。名を、ホツツジといいます。
森の中に葉巻がなっています。そんなばかなとお思いでしょうが、ご覧ください。立派な葉巻に見えませんか? 葉巻とは、葉っぱを巻いてつくったたばこですが、これも葉っぱを巻いた製作者かいるのです。それが、ハマキガです。
ハマキガとは、葉巻を作る蛾だから。成虫でも1cmくらいの小さな蛾です。彼らはその卵をかたまりで産みます。ここで親どもは、愛する子どものために葉をくるくると巻き始めるのです。約2週間でふ化して幼虫になり、さらに30日ほどするとサナギになります。寒い冬は、幼虫のときに越すことになるのですが、その越冬の際に便利なのが、この葉巻です。くるくる丸めた葉っぱはあたたかく、そして食料の貯蔵庫でもあります。
上の写真は、意地悪な人間が、ハマキガの丸めた葉っぱをほどいてみたところです。ハマキガは、なにやら粘っこいものを出して、それで葉っぱを丸めたままにしておいています。ちょいちょいと広げたら、葉っぱは元通りの平らな葉っぱに戻ってしまいました。人間には、もう一度葉っぱを丸めて葉巻をつくることはできませんから、このハマキガの幼虫は、かわいそうなことになったのではないかと思います。ごめんなさい。
というわけで、森の葉を使って安眠の場を作る、したたかな蛾が、ハマキガです。幼虫が巣だったとき、巻かれた葉っぱにノコリガがあるかどうかは、未調査です。
この花、ご存知ですか? 知らない方、多いと思います。なんだか生き物みたいに見えるかもしれません。チョウチョ? うん、チョウチョだと思って見た方が、納得できるかもしませんね。
しかしこれ、立派な花なんです。その名をイタドリといいます。なんと「虎杖」と書きます。外から見ればチョウチョのように見えるし、名前を知ればまったく読み方がわからない。なんとも不思議な植物です。このイタドリ、春には山菜として食べられます。これも、知らない人が多いのではないかと思います。なんだか、なぞの植物みたいですね。
しかしまたこのイタドリ、農家にとってはやっかいな植物でもあります。なんと、除草剤をかけてやっつけようと思っても、さっぱり死にません。畑や田んぼの土手に、どんどん増えていってしまいます。除草剤の使用については賛否のあるところですが、ことイタドリに限っては、除草剤が効かないのですから、そんな議論はどこ吹く風です。
それでもその花を見る限り、やっかいなことは忘れて、美しいなぁと思ってしまうのでした。
ご覧の通り、なかなかおいしそうなブドウです。しかしこのブドウの不幸は、なんとその名をエビヅルなんていうことです。なぜブドウなのにツルなんでしょうか。れっきとしたブドウなのに、お気の毒です。もっとも、当のエビヅルが、自分の名前を不幸だと思っているかどうかはわかりませんが。
あぶくま山系には、3種類の山ぶどうがあります。その名もヤマブドウ、野葡萄、そしてエビヅルです。山ぶどう三兄弟なのに、エビヅルだけがツルと呼ばれています。エビヅル本人が不幸だと思っていなくても、わたしには気の毒に思えてしかたがありません。
そしてまた、このエビヅルは、ヤマブドウとちがって、小粒だけどおいしいのです。ツルという名前をつけておけば、他人はブドウだと思わずに食べないから、おいしいのは全部自分のものになると思った欲の強いひとが命名したのでしょうか。でも果実には名前が書いてないから、意味ないですね。真相は闇の中、山の中。山の中でエビヅルを見つけたら「キミがほんとうはブドウだって、わかるひとにはわかっているよ」とやさしく声をかけてあげてくださいね。
川のそばによく見られる木の実です。ちょうど今ごろ、実が赤から黒に変わってくると、そしたら食べごろ。わたしにとっては、なつかしい味でもあります。
これは木の実か関節か。あるいは丸い生き物が、細長いミミズをくわえているかのようにも見えるでしょうか。さてこれはいったいなんでしょう。答えは虫のおうちです。中に入っているのは、タマワタムシという、アブラムシの一種です。
エゴノキ、別名、わたしらはヂシャボなんていいます。近年の緑化運動で珍重されると思えば、魚釣りにも使われたりと、なかなか用途が広い木でもあります。
平伏の森の国有林にありました。平伏沼の周辺は、やはり自然の宝庫です。
ヂシャボというのは、その実のなり方から名を取ったと聞いています。いっぱいあるから、人間ではなくて、牛かなんかではないかと思いますが、この実のなり方が乳に見えた方がいらっしゃれば、それはお目が高い方です。ヂシャボの名は、乳成からきているのです。乳成木(チシャキ)が転じてチシャボ、ヂシャボというわけです。
エゴノキの別名として萵苣の木(ちしゃのき)としている文献もあるので、乳成の謂れは当地オリジナルかもしれませんが、だとしたらお目の高かった当地の先人に敬意を表したいと思います。
エゴノキは何本か株になって公園などに植えられますが、また将棋の駒にもなります。さらには魚をつかまえる時にも使います。川にまいて、魚がしびれて浮かび上がったところを捕獲するのです。
多方面に大活躍。エゴノキの名は、自分勝手な木、という意味ではなくて、その実がえぐい(苦い)からだということです。
これはなんでしょう? なにやら、木にぺったんとなんかが貼ってあるような感じです。まるで湿布でも貼ってあるみたい。木が打撲でもして痛いのでしょうか? これ、実は病気なんです。
コウヤク病と読むのですが、膏薬病と書きます。膏薬とはそのものずばり、湿布みたいなものですから、字のまんま、ですね。なにかといえば、カビです。この木はサクラですが、枝や幹にできます。江戸時代から昭和の初め頃まで、貼り薬のことを膏薬といいましたから、この病気が膏薬病と命名されたのも、その頃のことかとは思います。
このカビは、カイガラムシの分泌物を栄養源として繁殖しますので、病気の治療も、カイガラムシを退治するということになります。カイガラムシはカメムシの仲間で、色素としての資源にもなるようですが、木をカビさせてしまうのは困ったものです。膏薬貼ってなおればいいのですが、どうもそういうわけにはいかないようなのでした。