川内村観光協会

山男参上(ナツハゼ)

1309ヤマオトコ

このあたりでは、この実のことをヤマオトコ、なんていいます。このあたりの人は、この実の正式名称を多分知らないのではないかと思いますが、実はナツハゼといいます。ブルーベリーやレッドベリーなどのベリー系の仲間です。
しかしまた、なんでハゼなんていうんでしょう? ハゼといったら、海の魚です。山を流れる川の魚の名前がつくならともかく、ヤマオトコは山の中にかわいい実をつけているのです。ヤマオトコのほうがぴったりの名前だと、わたしは思うのであります。

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ヤマオトコは、山の頂上付近に生えていることが多い植物です。なので秋に山登りをする人は、この実を食べて登山の疲れを癒しました。ヤマオトコという名は、こういう理由があったからだと思います。
ナツハゼという名前は、わたしの苦手なインターネットを調べると「夏にハゼノキのような紅葉を見せるから」ということらしく、海のハゼとは関係ないような感じなのですが、それでもわたしはヤマオトコのほうが名前としてはステキだと思います。
そういえば、川内村で食品の放射能検査が始まった頃、ヤマオトコを検査に持ってきた人がいました。検査官も村人なので、なんの不思議もなく検査をして(数量がどれほど出たのかは失念しました)村の広報誌にも「山男」として掲載されたのですが、広報誌はいまやインターネットで村人以外の人も見ることができるので、いったいこれはなにを測ったのだとひそかに話題になったことがあるそうです。インターネットの世界は、不思議です。

ヤマボウシが教えてくれる季節

1309ヤマボウシ

川内村ではヤマガなんていいますが、ヤマボウシという植物です。ご覧の通り、かわいい赤い実をつけます。この実は食べられます。しかもおいしい。果実酒にしたりする人もいます。でも今日は唐突にキノコの話をしたいと思います。

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川内村は、キノコの名産地でありました。原子力発電所の事故以降は、キノコには放射能が多く含まれているということで、村外、特に県外の人には敬遠されがちですが、わたしらは放射能検査をして、食べられると判断したものはおいしくいただいています。不安な方には、無理に食べろとは申しません。無理に食べていただかなくても、わたしらが食べますから、大丈夫です。
と、そういうお話ではなく、秋はキノコの季節です。人によって、キノコの季節を察知するテクニックがあるのですが、そのひとつがこのヤマボウシです。この実が赤くなったら、あのキノコが出ると喜び勇んで出かけていく、というわけです。
とっておきの話をしたつもりですが、考えてみたら、ヤマボウシだけを見つけても、肝心のキノコが出る場所を知らなかったら、喜び勇んで出かけようにも、どこに出かけていいのかわかりませんね。すいません。
もうしわけないけど、わたしだけ喜び勇んで出かけていくことにします。

1309ヤマボウシ

ツルは千年、ブドウはエビヅル

1309エビズル

ご覧の通り、なかなかおいしそうなブドウです。しかしこのブドウの不幸は、なんとその名をエビヅルなんていうことです。なぜブドウなのにツルなんでしょうか。れっきとしたブドウなのに、お気の毒です。もっとも、当のエビヅルが、自分の名前を不幸だと思っているかどうかはわかりませんが。

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1309エビズル

あぶくま山系には、3種類の山ぶどうがあります。その名もヤマブドウ、野葡萄、そしてエビヅルです。山ぶどう三兄弟なのに、エビヅルだけがツルと呼ばれています。エビヅル本人が不幸だと思っていなくても、わたしには気の毒に思えてしかたがありません。
そしてまた、このエビヅルは、ヤマブドウとちがって、小粒だけどおいしいのです。ツルという名前をつけておけば、他人はブドウだと思わずに食べないから、おいしいのは全部自分のものになると思った欲の強いひとが命名したのでしょうか。でも果実には名前が書いてないから、意味ないですね。真相は闇の中、山の中。山の中でエビヅルを見つけたら「キミがほんとうはブドウだって、わかるひとにはわかっているよ」とやさしく声をかけてあげてくださいね。

サルも大好き、サルナシの実

1308サルナシ

なんで山に入るの?と聞かれますが、そりゃ、四季それぞれにおいしいことがあるからです。そして秋はこれ。サルナシの実や山ぶどうの実が、わたしを待っています。おいしいんです。これが。

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1308サルナシ

サルナシは、川内村のこのあたりではコクアといいます。なんでコクアというのかはわかりません。小さい頃からコクア、コクアと聞いて育っていますから、問答無用です。どうやらコクアとは、サルナシの実のことをいうのだそうですが、はつお少年が受けた川内野山学校の知識では、コクアとはサルナシそのものだったような気がします。

1308サルナシ

コクア、サルナシの実は、わたしの大好物ですが、わたしだけではありません。クマやサル、スズメバチもこの実が大好物です。最近、サルやクマが人里に降りてくるという話をよく聞きますが、山からサルナシや山ぶどう、ドングリが姿を消していっているという証なのだと思います。
サルナシの実のビタミンCはレモンの10倍! クマもサルも、きっとそれをよく知っているのでしょうね。
ところでサルナシの名前は、そのサルに由来するという説があります。サルがサルナシの実を持って帰って大事に保管しておった。持ち主のサルがそれを忘れてしまったのか、保管されているサルナシを発見した村人がおりました。するとそのサルナシは、見事に発酵して酒になっていたのでした。
それからその実はサル酒と呼ばれるようになり、いつのまにかなまってサルナシになったということです。
今では、サルナシを材料に酒を作るような好き者もいなくなりましたが、ワインを作ったり、サルナシの実をつけて果実酒を作る人はいるようです。

トチの実はいかにしてトチモチに

130719トチの実

これ、なんだかわかりますか? テニスボールがなっているわけじゃありません。これはトチの実です。
この実を割ると、中に黒い種が入っています。なんというか、クルミそっくりなんでありますが、この種が、トチモチの原材料になります。

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この実は、古代から食用として親しまれてきたということです。しかしいったい、この実が食べられるなどと、いったい誰が発見したのでしょう? 古代人というのはすごい人たちだなと思います。
そのまま食べたのでは渋くて渋くて、とても食べられない。長い時間あく抜きをして、もち米に混ぜて、それで初めておいしいトチモチになります。
わたしらは、そんな食べ方をばあちゃんから教えてもらえますが、初めてトチの実を食べようと思った古代人は教えてくれる人がいないわけですから、さぞたいへんだったと思います。
なんだか、そんな古代人に会ってみたくなりました。存分にあく抜きをしなければ食べられないトチの実は、たいへんにアクが強い果実ですが、トチの実を初めて食べた古代人も、もしかしたらアクが強いやつだったのかもしれません。

甘くておいしいニガイチゴ

130710ニガイチゴ

野に咲く小さな果実、野イチゴ、クマイチゴ、そしてニガイチゴ。ニガイチゴとはその名の通りで、苦苺と書きます。つまり苦いイチゴという意味なのですが、さて、なんでそんな名前になったんだろう。私はニガイチゴはとてもおいしいと思います。

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物の本にもインターネットの検索で出てくるニガイチゴについての記述でも、実が苦いからニガイチゴだと書いてあります。みなさん、食べたことあるのかなぁ。食べたことがある人でも、ちゃんと熟してないのを食べちゃったのかもしれません。熟したニガイチゴは、とてもおいしいです。ニガイチゴなんて名前をつけられちゃって、ほんとうにかわいそうです。
山ではまず黄色いモミジイチゴが実をつけます(春に近いうちに実をつける植物なのにモミジとはこれまたいかに?)。その後に出てくるのが、このニガイチゴです。どちらのイチゴも、たいへんおいしいです。私たちが子どもの頃には、学校帰りの絶好のおやつになったものでした。

130710ニガイチゴ