川内村観光協会

嫌われっ子世の役に立つクドフジ

1308クドフジ

このへんでは、クズのことをクドフジといいます。川内独特の呼び名かと思ったら、どうもそうでもなさそうですが、福島県以外ではあまり呼ばれない名前だと思います。美しい花で、一度見たらその美しさを忘れることはできません、とわたしは思います。

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しかしこのクドフジ、あまりいい印象を持ってもらってはいないようで、それもそのはず、いろいろな植物にからまります。最終的にはスギでもヒノキでも有用な植物を枯らしてしまうので、ほめてもらえるわけがありません。ぐるりと木にまきつけば、太陽にもあたりにくくなってしまうしで、からまれた木はかわいそうに生きていけないのです。
昨今は、賛否はありますが、除草剤が進化しています。しかしクドフジは、除草剤でもなかなか死にません。だからクドフジなんです。クドは「くどい」「しつこい」という意味で、フジがツルであることを表しています。
こんなやっかいものですが、葛粉は葛餅になるし、根っこは風邪薬になったりします。これが葛根湯です。なんでもはるか昔の万葉集の頃にはすでに薬として登場していたみたいなのです。
クズはクズでも、クドフジはお役に立ちます。そしてやっぱり、美しい。

1308クドフジ

未来を見る桜(ウワミズザクラ)

1308ウワミズザクラ

これは、ウワミズザクラという花の実です。ウワミズザクラは、上溝桜と書きますが、その由来は占いにあるのでした。そしてまた、その実は食用になったりもします。判子やお盆などの漆器の材料になったりもするという、人間の生活に密接な草木が、このウワミズザクラです。

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1308ウワミズザクラ

占いとは亀甲占いのことで、熱したウワミズザクラの木枝を溝を掘っておいた亀の甲羅に押しつけて、根津によってできる新たな亀裂で運命を占うのです。
予め彫られた骨の裏の溝を焼くことから「裏溝」「卜溝」(ウラミゾ)と称されていたようですが、これが変化してウワミゾになって今の名前に落ち着いたということです。桜という名前がついていますが、その花はよく知られている桜とはまったくちがうもので、同じバラ科の親戚ではありますが、ウワミズザクラと他の桜とは、あまり親戚関係が強くないようです。
今回ご紹介しているのはウワミズザクラの実ですが、この実は若い頃には黄色く、のちに赤く変わってきます。塩漬けにして食用にするのは若い実で、アンニンゴ(杏仁子)といっているそうです。いつか自分で加工して食べてみようと思うのですが、夏から秋はなかなかいろいろとほかの食材が豊富で、いまだに実現できていません。
亀甲占いで川内村の将来を占ったら、はたしてどんな未来が現れるのでしょうか?

1308ウワミズザクラ

男らしきはオトコエシ

1307オトコエシ

世の中にはオトコとオンナがいて、仲良くしたりけんかをしたりしながら、回っています。そしてまた、草花の世界でも、オトコとオンナいるのです。ニッポンの実社会ではとかく女性は男性に比べて立場が弱いと問題になったりいたしますが、お花の世界では、どうも女性の方が立場が強いような気がするのですが、わたしの気のせいでしょうか。わたしの家庭内についての立場は、詮索しないでください。

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オトコエシは男郎花と書きます。ちょっと隠微な名前ですが、昔ことばでは美男のことを男郎と称したらしいですから、そんなに悪い名前ではなかったのかもしれません。オトコエシと対になる存在がオミナエシです。オミナエシは一般の方にもよく知られていると思いますが、それに比べて、オトコエシはあまり名前を知られていないんじゃないかと思います。オミナエシは秋の七草の仲間ですが、オトコエシはなんでもありません。こんなふうに、オトコはオンナよりさびしい存在のわけです。
オトコエシは、オミナエシに比べると茎ががっしりしていて、少し毛深くて、確かに男っぽいので、その名前の由来もそういうことなんだろうと思いますが、調べてもあんまりしっかりとした記述がありません。オミナエシに比べると、影の薄さが気になります。
この花は別名敗醤と呼ばれていて、置いておくと醤油の腐った匂いを発するからこういう名前になっています。オミナエシはそれでも飾ってもらえるのですが、オトコエシはどうでしょう?
根は漢方薬になるということですが、わたしは使ったことがなくて、なにに効くのかも知りませんでした。どうやら解熱、消炎、解毒にきくそうですが、今度熱を出したらためしてみようと思いますが、生で食べればいいというものではなさそうです。

1307オトコエシ

残暑はオニユリの季節

1308オニユリ

夏はユリです。しかしこのユリは、誰かさんと同じように、恥ずかしそうに下を向いて咲いています。恥ずかしそうにしているのに、名前をオニユリなんていいます。わたしやあなたのオニヨメのように、いばってはいないのです。

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1308オニユリ

オニユリは、昔はどこにでも咲いてました。最近はうんと少なくなりました。オニユリはムカゴを作って子孫を増やす花です。ムカゴは種のようなものですが、茎に直接できる種です。なのでもっと増えてもいいのですが、少なくなりました。ただの原っぱがあればオニユリも育ちやすいのだと思いますが、手入れをされなくなったジャングルのような森林では、なかなかオニユリも増えません。残念ですけれど。
しかし、この花はなんでオニユリという名前なんでしょう? どうもその答えは、誰も知らないみたいでした。夏のこの時期しか見られないオニユリの花、どうか直接会いに来て、なんでオニユリなんて名づけられたか、そっと聞いてみてください。

1308オニユリ

右巻き左巻きねじりバナ

1308ネジバナ

芝生が大好きな花です。実はこう見えて、ランの仲間なのだそうです。
芝生でなければ育たないわけではありませんが、芝生があれば水を得た魚、芝生を得たネジバナ。じゃんじゃん育ちます。その名前の由来は、ご覧の通りです。

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この花、芝生が好きなんだなぁと思ったのは、もうずいぶん前です。子どもの頃だったか青春の頃だったか(わたしにも青春の時代があるのです)、ねっ転がると気持ちがよさそうな原っぱがあったとして、ねっ転がろうとすると必ずそこに先客があった。それがこのネジバナです。

1308ネジバナ

こんなふうに、花がねじれて咲くのは、地球広しといえどこの植物だけです。ずいぶん大きく出てしまいましたが、おそらくまちがいないはずです。
ねじれ方には、右巻き、左巻きとあります。左巻きは性格がまがっている、などということはありません。同じくらいの比率で、左巻きと右巻きが現れます。そればかりか、ときどきねじれていない、まっすぐなものも登場します。それぞれ、どんな理由で右なのか左なのかまっすぐなのかは、ネジバナに聞いてみたこともないし、おそらく聞いてもわからないと思います。それが自然界のおきてです。
この花の種は100メートルも1000メートルも飛んでいくそうなので、拡散は上手です。どこからともなく種が飛んできて、増えていきます。
美しい花だと思いますが、自宅の庭にきれいに芝生を植えていたと思ったら、いつの間にかネジバナの来襲を受けていたら、やっぱりちょっとこのやろうと思ってしまうかもしれません。

1308ネジバナ

乱舞ヤマユリ

1308ヤマユリ

今の季節はこれ。そこここで咲き乱れているのが、ヤマユリです。遠くからでも甘い香りが漂ってきて、姿が見えなくてもそれとわかりますが、なに、これだけ派手な身なりをしていれば、誰だって気がつくことでしょう。
半月くらいの寿命があるので、比較的長い間花の咲く姿を楽しめますが、場所によって少しずつ旬の季節がちがいます。だいたい、7月下旬から咲きはじめて、8月中旬くらいまで咲いています。雨が多かった今年(2013年)はしぼむのが早いので、あるいはお盆前に季節を終えてしまうかもしれません。
いずれにしろ、川内村のこの季節は、ヤマユリの天下です。

ヘクソ、鼻くそを笑え

1308ヘクソカズラ

上川内字久保の山林で見つけました。でもどこにでもある雑草です。つる性の多年草ですが、問題は、この草にはちょっとばかりにおいがあるということです。

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においがあるのは葉や茎ですが、お察しの通り、名は体を表す。ヘクソカズラというその名前は「屁・糞・葛」です。わかりやすいというか、これ以上ありえない、お気の毒な名前です。さらにこのヘクソカズラには古来名があるのですが、これも「クソカズラ」であるという、身もふたもない草なのです。
そしてこのヘクソカズラ、くさいだけではなくて、薬にもなります。ヘクソカズラの実はシモヤケやアカギレにきくのだそうです。
乾燥した実はくさくないそうですが、実だけでなく、野に咲く状態でもわたしはこれをくさいと感じたことはないのですが、くささの感じ方にも個人差があるのか、私の鼻がおかしいのかは、よくわかりません。ぜひ一度、当地のヘクソカズラの香りを味わっていただければ幸いです。

1308ヘクソカズラ

水につければミソハギの花

1308ミソハギ

ミソハギという花があります。ミソハギのハギは萩に似ているから。ミソはミソではなくて、禊(みそぎ)ということです。なんでも、禊の儀にこの花が使われたということなのです。小林一茶も
みそ萩や 水につければ 風の吹く
と歌っています。

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ご覧の通り、紫色の、美しい花です。写真を撮ったのは曇りの日で、あんまり鮮やかに写っていません。ごめんなさい。
昔は、どこにでもいっぱいありました。主に田んぼのあぜ道とか沼地のようなところに生息するのですが、湿地でなくてもミソハギは育ちます。花をつけるのがお盆の季節なので、盆花(ぼんばな)と呼ばれることもあります。禊に名前をもらったりお盆の花といわれたり、なにかと神様に近い花なのです。
この花をどんなふうに禊に使ったのかは、私にはよくわかりません。神主さんのお祓いの儀式に使われる幣みたいな使い方を去れたのかなぁと思いますが、これはわたしの想像です。
この花、かつては村のあちこちで見られたものですが、今はめっきり少なくなってしまいました。というか、ほとんど存在しなくなりました。自然の流れなのか乱獲なのか他の理由なのかわかりません。子どもの頃にはたくさんあって、貴重な花だとはちっとも思っていなくて、それほど価値があるとも思っていなかった花でもあり、そういえば、うちの庭で育っていたミソハギは、あんまり数が増えすぎてしまったので、処分させてもらうほどでした。
今、すっかり数が少なくなってめったに見られなくなると、いきなり珍しい貴重な花だという思いになってきて、そうするとその美しさもいっそう増してくるように思います。
人間の気持ちというのは、そんなものではないでしょうか。それとも、禊を受けたほうがいいでしょうか?

1308ミソハギ

こわ美しいイワガラミ

1307イワカガミ
イワガラミは、美しい花を咲かせる植物です。しかしこのイワガラミ、おそろしい一面を持っています。美しいものには油断をしてはいけないのです。

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イワガラミは、漢字で書くと岩絡みです。岩に絡みつくと書く通り、岩壁や大木に絡みついて生息しるツル性の植物、というのが実の姿です。イワガラミに絡みつかれた木は、やがて全身を縛られ首を絞められるように、倒れてしまいます。
寄らば大樹の陰とは申しますが、寄っていって大樹を倒してしまうのだから、隅に置けません。なんともこわい植物ですが、美しいもののこわさは、人間社会にも通じるような気がします。いえ、わたしは美しいものに絡まれて倒されるようなあぶない目にはあったことはありませんがね、もちろん。

1307イワガラミ

トチの実はいかにしてトチモチに

130719トチの実

これ、なんだかわかりますか? テニスボールがなっているわけじゃありません。これはトチの実です。
この実を割ると、中に黒い種が入っています。なんというか、クルミそっくりなんでありますが、この種が、トチモチの原材料になります。

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この実は、古代から食用として親しまれてきたということです。しかしいったい、この実が食べられるなどと、いったい誰が発見したのでしょう? 古代人というのはすごい人たちだなと思います。
そのまま食べたのでは渋くて渋くて、とても食べられない。長い時間あく抜きをして、もち米に混ぜて、それで初めておいしいトチモチになります。
わたしらは、そんな食べ方をばあちゃんから教えてもらえますが、初めてトチの実を食べようと思った古代人は教えてくれる人がいないわけですから、さぞたいへんだったと思います。
なんだか、そんな古代人に会ってみたくなりました。存分にあく抜きをしなければ食べられないトチの実は、たいへんにアクが強い果実ですが、トチの実を初めて食べた古代人も、もしかしたらアクが強いやつだったのかもしれません。