川内村観光協会

今はなきシダレモミを詠む

1308シダレモミ歌碑

村道毛戸川・吉ノ田和線を県道36号線から毛戸のほうに上がっていく途中に、歌碑があります。かつてここを歩いた詩人の会田網雄先生が詠んだものです。歌碑は、昭和34年に建てられました。

会田先生は、太平洋戦争中の1940年に南京で草野心平先生と出会っています。そして昭和28年、1953年に心平先生が初めて川内村を訪れることになる時、心平先生に同行していらしたのが、会田先生でした。心平先生より10歳ほど若い方ですから、おそらく心平先生にはずいぶんとかわいがられていたのだと思います。
その会田先生が詩を詠んだのは、川内村を訪れたその年、昭和28年のことでした。

大いなる
枝たること一百年
毛戸川の精と戯れる

さて今回、この大いなる枝たること一百年、というこの詩文ついて、ここを通りかかった方からご質問がありました。曰く、百年ものの大いなる枝の大木はどこにあるんでしょう? というご質問です。
お調べいたしました。その木は、ないそうです。

1308シダレモミ歌碑

昭和28年の当時、歌碑の前には立派なシダレモミが枝を張っていました。それが会田先生が詠んだ大木です。しかし寄る年波には勝てず、やがてそのモミも枯れてしまいます。いつ枯れてしまったかについては諸説があって、今となってはいつと特定できないのですが、昭和の終わりだったか平成の初めだったか、いずれにしても、平成10年を過ぎる頃には、ここにはモミの木は見られなくなっていたのだと思います。
村の古老に聞くと、このモミの崖の下側には、子孫となる若いモミが育っているそうで、それが会田先生が詠んだモミと同じような枝ぶりを見せているとのことです。しかし残念ながら、そのモミは道路から見えるところにはなく、そこまで行く道もありません。
立派な枝のモミの木は、今は会田先生の歌碑にのみ、その面影を残しています。

1308シダレモミ

緯度37.356633 経度140.877802

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