川内村観光協会

川内村の昔話「小僧待て」

小僧待て
 昔々、ある村に、みなしごがいたんだと。村人達はかわいそうと思って寺に預けたんだと。和尚は「いい小僧来たな」と。和尚は、こき使うんだけど、めしは、たんと食(か)せていたど、小僧は、薄気味悪い和尚だなーと感じていたど。そんで、いつか逃げっぺ、と。和尚もそれを感ずいて、小僧に、腰縄を結んでいたど。ある日、風呂の水くみやらせたど。ガラガラと井戸車の音が鳴るので、「小僧やってるな」と。そして、時々、綱を引っ張って、「小僧」と呼ばると「ハイ」っと返事をさせていたど。そのうち、小僧は腰縄をほどいて、井戸車さ結んだと。和尚、井戸車ガラガラと音するんで安心していたど。音はするけど、返事ない、おかしいとおもいきり綱を引っ張ったんで井戸車ぼっこれてしまった。そんで、小僧が逃げたのわかって、「小僧待て」と、追っかけてきた。早足で、とても逃げきれない。だんだん近づいてくんだと、すると、目の前の川の側に1本の杉の木あったんで、その木によじのぼって隠れたんだと。和尚は「どこさ行った」と。その晩は月夜で、和尚が川面をみたら杉にいる小僧が写ったんだと。ここにいたか、って、川の中に飛び込んだんだ。3回やってもつかまんね。そんで、杉の木を見たら小僧がいる。「そこに小僧いたか」と杉の木揺さぶったもんだから、小僧は、川の中に落ちて流されてしまったど。和尚、追っかけて行った。小僧は大きさ切り株を見つけて、その洞の中に隠れた。「食せて、太らせて食うベと思ったのに」ぶつぶつ言いながらその切り株担いで寺に帰ったど。そして、寺のいろりに切り株をくべて、酒を飲み始めたど。洞の中の小僧は熱くて着ている着物をしぼっていたど。和尚、眠くて天井裏上がって、大きな桶に入って寝てしまった。小僧は洞から出て村の人々を呼びに行ったんだと。「和尚に食われそうになったんで、なんとかしてよ」村人達、天井裏さ上って桶のふたを開けて、お湯を入れたら「あつい、あつい」と。栓の穴を見たら大きな水グモだったんだと。

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